今さら聞いたろ!「大阪都構想」
大阪都構想について詳しく解説します。
都構想って、ええんやろ?知らんけど。
テレビや新聞で聞き馴染みのある「大阪都構想」
なんか響きはいいけど、結局何がどう変わるん?
だれか、ちゃんと教えて。
先生ー。テレビで「都構想」ってよく聞くんだけど、これって何ですか?
お母さんも「大阪が良くなるんやで」としか言わなくて、よく分かりません。
たしかに分かりにくいのう。テレビやニュースで聞く「大阪都構想」の目的も、ここ数年で何度も変わっているからのう。お母さんも、よく分からんじゃろな? これまでの都構想の流れをまとめてみよう。
これまでの都構想の流れを見てみよう。
都構想になると効果と費用はいくらなの?
えっ!「都構想」になると
4000億円も効果があるの?
費用はかかるけど効果がよくわからないのに都構想って本当は一体何がしたいのかなあ?
衝撃!
都構想になると
- 「都」になる方法が存在しないって本当?
- 実は都構想で三重行政になってしまう?
- 政令指定都市じゃなくなるとどうなるの?
都構想の住民投票が可決しても「大阪府」は「大阪都」にはなりません!「大阪都」にするためには、事前に名称変更手続きをしてもらう必要があるんです。
住民投票を行うにしても、事前に国会の手続きを経ていない状態で大阪都になることはできません。
また、地方自治法という法律にある「都道府県の名称は法律で定める」という条文を国会で削除してもらった上で、大阪府が「大阪都」と条例を変更することは可能ですが、 いずれもハードルが非常に高く、国会で新たな法律を作ってもらうか、法改正してもらわなければ、 「大阪都」になることはできないのです。
- 「大阪都」に名前を変えるのは、大阪だけでは決められない!国会での法律改正などが必要です。
都構想になると、一般には大阪市を解体して、大阪府と特別区に分けるとされていますが、実は大阪府と特別区の間に巨大な「一部事務組合」という組織が設立されることになります。
大阪市が無くなってしまった場合、24区全体を一つにまとめて管理しなければならない情報システム管理や介護保険などの事務は、大阪府にも、都構想の特別区も担当することができない事務として残ってしまいます。
このため、都構想の特別区とは別に24区全体の事務を担当する一部事務組合を別に作る必要があります。
つまり現状が『二重行政』であれば、「大阪府」、「一部事務組合」、「特別区」の『三重行政』になってしまうのです。二重行政の解消を目的とした都構想が三重行政を生み出すのは本末転倒ですね。
- 「二重行政」を解消するための都構想は、「三重行政」を生み出してしまう。
大阪市などの地域の自治体は、その地域の発展や人口規模などに応じて与えられる権限が異なります。都市が成長すればするほど、一般市、中核市、政令指定都市とランクが上がり、 大阪市は、一番ランクが上の政令指定都市に認められています。
【参照】総務省HP 地方自治制度 地方公共団体の区分もし都構想が実行されると、大阪市が解体されることで、政令指定都市としての権限と財源がなくなり、新たにできる都構想の特別区は一段階下の 中核市レベルの権限と財源に縮小されてしまいます。
政令指定都市として豊富なお金(税収)により、3/4を自前で行政運営してきた大阪市は、特別区になると自前の税収が1/4に減少してしまいます。そうなると常に大阪府(都)頼みの財源をあてにせねばならず、自立した自治体経営からほど遠いものとなってしまいます。
自主財源が少なくなると、区独自で施策を行うことが難しくなり、権限が小さくなると、自分たちの都市のことを自分たちで決めれる範囲が狭くなります。
そもそもなんで、東京23区ができたの?
「東京都」は、もともと「東京府」だったってご存知ですか?
75年前まで存在していた「東京府」は、いまの「大阪府」と似たようなもので、その頃の東京には、「東京府」と「東京市」が存在していました。
ですが東京府の8割の人口を占めていた、東京市の発言力が強くなってしまい、政府から府へ、府から市へ、とトップダウン形式に言うことを聞かせたい政府としては好ましくない状況でした。
そこで、戦争をしていた昭和18年(1943年)に政府は、東京市の発言力を弱くするために、東京市を分割して35区(今は23区)に分けて、政府の言うことを聞かせやすい状況を作りました。
つまり「東京都区」制度は、戦時法制の一つで国主導で実行され、どんどん国に権限が集中(中央集権)するようにするためのものだったわけです。平和な現代では、「地方創生」という言葉があるように、地方がより成長できるように、地方ごとの権限が強化(地方分権)される時代です。
つまり、都構想は、時代に逆行した制度と言えますね。
- 東京23区は、日本が戦争をしている頃、国が首都(東京)に言うことを聞かせるためにできたもので、現在の地方分権の流れに逆行している。
「区」にも、いろいろ。
ニュースで、「特別区」とか「総合区」とか、ときどき「行政区」とか聞くけど、「区」にも色んな種類があるの?
どちらも今より区役所が色んな仕事ができるようになるんだね。
「特別区」になると、今の大阪市役所の職員の多くが、特別区に配置されることになるんじゃが、配置される職員数が多すぎて、今の区役所には入りきらないんじゃよ。
そうすると、新しい庁舎を建てるか、広い事務所を借りるしかないんじゃ。 今の計算じゃと庁舎を建てると約360億円、庁舎に入れるシステムと合わせると 「特別区」は初期費用で約560億円、運用費用や人件費を含めると約1500億円くらいかかるようじゃの。
一方の「総合区」は、職員の移動がそこまで多くはないんで、今の市役所や区役 所を活用すればよいんじゃ。
今の大阪市の「総合区」8区案の試案では初期費用は約60億、運用費用を含めると74億円と言われておるのう。 24区のままで総合区にするなら費用は0円とも言われておる。
特別区では約1500億、総合区では多めに見ても約74億の費用って20倍も違うんだね!
特別区導入初期費用
総合区導入初期費用
- 都構想の「特別区」にするための費用は1500億円かかるのに対し、「総合区」は今の8区案では約74億円と試算されている。
- 現状の24区のままで総合区にするなら費用は0円とも言われている。
どっちも公務員数が減るとしても、「特別区」にしたほうが「総合区」よりも、節約になるんでしょ?
え?増えるの?
1か所でやれる仕事を4つに分けてやるって、かえって効率悪いやん。
なんやそれ。
- 都構想の「特別区」の公務員数は、「総合区」よりも多くなる。
特別区になると、使える予算がいっぱい増えるって聞いたよ。
2000億も減るって、そんなこと聞いてない! どういうことか説明してよ!
大阪市に住んでる人が納めている税金が、他の市に使われるって、そんなの全く納得できないよ!!
特別区になると、使える予算が2000億円も減るってことは、住民サービスって一体どうなるの?心配だよー!
うんうん。
順番に何が削減できるか見てみよう。
結局、市民サービスを削るしか方法はないってことじゃないのよ!
残念ながら、2000億円も予算がなくなると、市民サービスを削る以外に方法はなさそうじゃのう。困ったわい。
都構想になると、大阪市民の貯金を切り崩さないといけない!?
都構想になると大阪市民の税収の多くは大阪府に一旦吸い上げられるため、特別区の自前(自主財源)の税収だけでは自治体の運営ができません。
このため、大阪府から財政調整交付金というお金を各特別区は受け取ることになります。しかし、現在、財政調整交付金として特別区に渡せる税は3種類(法人市町村税、固定資産税、特別土地保有税)に限られています。
都構想になると、新たな庁舎整備、システム構築、公務員増によるコストの増加が発生するため、これだけでは特別区が行政運営するお金として足りません。
財政収支の見通しにおいて、特別区は平成37年度から収支不足による赤字が発生しています。このため、大阪市がこれまでコツコツ貯めてきた貯金(財政調整基金)を取り崩していくことになります。
現状の貯金額で本当に将来、特別区で発生する赤字をすべて補填することができるのかは、特別区が設置されてみないとわからない不透明な状況です。
- 都構想の特別区が新しく作られると、赤字の補填で市民の貯金を切り崩さないといけない。
大阪市は政令指定都市なので、個人市民税、固定資産税、法人市民税など7種類の税収が自主財源で、6600億円の税収があります。これに地方交付税などを加え、平成27年度の歳入は約8800億円でした。
これは総合区になっても変わりません。 特別区では個人市民税、軽自動車税、市たばこ税の3種類の税収のみが自主財源であることから、特別区では約1800億円と税収が4分の1に減少します。これに財政調整交付金や目的税交付金を受けて、特別区の歳入は約6800億円となります。
では現行の大阪市8800億円と特別区6800億円の歳入差額の約2000億円は一体どこにいくのでしょう。これらは大きくは大阪府の財源となります。
大阪府は府下の市町村の自治体間の貧富の格差を埋めるために「所得の再分配」を行うことになり、旧大阪市民の税金は市外に流出することになります。つまり、この約2000億円は、市内の行政サービスの費用に全額が使用されるとは限りません。現状、判明しているだけでも982億円は市外へ流用され、市内のサービスの低下が危惧されています。
- 特別区になると、市税約1000億が市外へ流出し、行政サービスが低下する可能性がある。
ちょっと待った! それ聞いてへんで!!
都構想が実現すると幼稚園や保育園が有料になって税金も高くなる?
小さい子供を幼稚園に行かせてるけど、都構想の「特別区」になっても 幼児教育料は無料のままで行けるの?
先生、家計に関わるから、教えてください。
パートで必死に働いて、税金を納めているけど、都構想の特別区になっても、市民の税金は、ちゃんと市民のために使ってくれるの?
うん、今は府と市に税金収めているわよ。それでそれで、どうなるの?
大阪府は一般に以下の3つに分けられます。
一方、大阪市は、政令指定都市であることから、ほかの一般市と同等の基礎自治事務のほか、譲与税や宝くじ財源などを活用して、市域全体に関わる幅広い広域事務を行ってきました。都構想になると、広域行政を一元的に担うことから、大阪府はさらに、①から③の事務のほかに、大阪市が担ってきた広域事務なども行うことになります。
しかし、本来、大阪市を特別区に分割して「広域事務は一元的に大阪府がやる」場合、その広域事務の財源に、府税のほか、譲与税や宝くじ財源などを活用してやるべきなのですが、「都構想」の制度では、特別区に格下げにより権限も財源も失った後も、旧大阪市民の税金を吸い上げる仕組みになっています。
大阪府下の他の市町村では、市町村の境界を超える広域事務は府税で実施しているのに、特別区民になった旧大阪市民は、 府税を払ったうえでさらに府に移管する広域事務の税負担も強いられるのは、税金の二重払いになってしまいますね。
都構想で、4つの特別区にすると、どんな影響があるの?
都構想になると、地域の特色や風土が異なる区を一括して大幅に合区するため、特別区内の地域ごとの予算配分や主張のぶつかり合いの調整が非常に難しくなります。
特に住民にとっての影響として問題となるのが、合区されると区の名称が変わるため、住所が変更されることです。現在の区の名称は、区の下に表記されることになることから、例えば、「大阪府大阪市東淀川区西淡路」という住所は、「大阪府東西区東淀川西淡路」になります。
また企業の所在住所も変更になるため、名刺等の住所変更は必要となりますが、当然、費用は各企業もしくは各自での負担となります。
都構想では、こうした住民や企業側が負担するコストについては、必要経費に盛り込まれていません。
特別区になると、大幅に合区されるため、住所変更が必要になる。